【僧帽弁閉鎖不全症の治療】犬のお薬と手術について
2023/12/01
病気の説明編はこちらhttps://yuri-ah2022.com/blog/detail/20231026155002/です。
今回は治療に関してお話します。
僧帽弁閉鎖不全症の治療には、お薬が主に使用されます。ステージによって異なる薬が推奨されますが、以下が主な薬の種類です
1.アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
全身の血管を拡張し、心臓のリモデリングを抑制する働きがあります。これにより、心臓形態の変化を予防し、血液の流れを改善します。
2.陽性変力薬(強心薬)
近年ではピモベンダンが使われ、安全性と効果が向上しました。心臓の収縮だけでなく、全身の血管を拡張して血液の流れをサポートします。
3.血管拡張剤
全身の血管を開くことに特化したお薬で、心臓の負担を軽減します。代表的なものにはアムロジピンや硝酸イソソルビドがあります。
4.利尿剤
肺水腫が進行した場合に使用され、体内の水分調整を促します。ただし、慎重な管理が必要であり、脱水に注意が必要です。主な利尿剤にはフロセミドやトラセミドがあります。
これらの薬物は症状の緩和や進行の遅延を目的としていますが、完全な治療には至りません。唯一の根本治療法は心臓の外科手術であり、成功率も90%前後と飛躍的に改善してきています。手術には費用やリスクが伴いますが、進歩した技術によりその安全性も向上しています。
治療法を選択する際には飼い主様が十分な情報を得て、専門的なアドバイスを受けることが重要です。治療は症状の管理や生活の質の向上を目指すものであり、患者さんと共に最適なプランを検討していくことが必要です。
血管拡張薬が負担を減らすというのは、どういうことかというとストローを思い浮かべると分かりやすいです。細いストローを使うと吸ったり吹いたりが難しいでしょうが、太いストローを使うと楽になりますよね?
これが心臓と全身の血管にも同じことが言えます。心臓は全身へ血液を送り出すポンプであり、全身の血管はストローのようなものです。細い血管ではポンプへの負担が大きくなりますが、血管拡張薬によって血管が広がることで、ポンプの負担が軽減されるのです。
次に、陽性変力薬(強心薬)についてです。この薬は非常に重要であり、かつては中毒のリスクが高いジゴキシンなどが主に使用されていました。しかし、現在は安全性が高く、有効性も優れたピモベンダンが利用されています。ピモベンダンは心臓の強い収縮を促すだけでなく、全身の血管を拡張する作用も持っています。これにより、病状の進行を遅らせる効果が期待されます。
最後に利尿剤について。進行した段階で肺水腫が発生した場合に使用され、体内の水分を適度に減少させて再発を防ぎます。ただし、過度な利尿は脱水を起こし腎臓に損傷を与え、腎数値が上昇する可能性があるため、検査と調整が必要です。腎数値が上昇したからといって、すぐに脱水や腎臓病を疑うというわけではなく、利尿剤によるナトリウム排泄が影響する他の指標も含め、総合的な観点で評価する必要があります。
これらのお薬は症状の緩和や進行の遅延を目的としていますが、唯一の根本治療法は心臓の外科手術です。手術には高額な費用や合併症のリスクが伴いますが、成功事例も増えています。心臓病を治す、肺水腫(心不全)への恐怖を無くすには外科手術しかありません。当院では心臓手術をおこなっていただける専門医への紹介が可能ですので、興味があれば一度お話を聞くことをおすすめします。
心臓手術を頑張ったハランちゃんです!↓
僧帽弁閉鎖不全症はまるで、命にかかわる肺水腫(心不全)へのエスカレーターに乗っているようなものです。このエスカレーターの進行速度を緩やかにするのがお薬であり、エスカレーターから降りる唯一の手段が外科手術といえます。
今回は治療に関してお話しましたが、何か気になることやご質問があれば、茨木市のゆうり動物病院までお気軽にお尋ねくださいね。患者様と飼い主様が安心して治療計画を進められるよう、専門的なサポートを提供いたします。
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ゆうり動物病院
院長 樋口裕梨
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茨木市で循環器のケアに精通
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