茨木市で動物病院として歯周病点眼ワクチンを実施 | 負担を掛けない対応

3歳以上のわんちゃんねこちゃんの歯周病予備軍は76.3％以上といわれています。実際診察室でお口を見てみると歯石がついていることがほとんどですが、歯石・歯垢がつくとどうなるか？というところを皆さん知らないことが多いです。歯周病は進行すると顎の骨が溶けて折れてしまったり、歯の根元で膿んでしまい、顔に穴があいて膿がでてくるといった状態になります。また、歯周病菌が分泌する毒素を肝臓が分解しなければならず、知らず知らずのうちに肝臓に負担をかけていることも多いです。

歯周病は歯垢・歯石に存在するPorphyromonas gingivalis（ポルフィロモナス ジンジバリス) という菌がリーダーとなって進行すると言われています。今までの歯周病予防はこの菌が住んでいる歯垢を歯磨きでとる・歯石除去術で歯石をとるという方法の1つだけでした。当院ではそれだけではなく、歯周病予防ワクチンと歯周病毒素阻害サプリメントの2つを追加で推奨しています。ワクチンをしていれば歯磨き・歯石除去をしないで良いというわけではなく、1つしかなかった予防策を3つに増やして歯周病に対抗しようという考え方です。

Porphyromonas gingivalis（ポルフィロモナス ジンジバリス）という歯周病原因菌が
1.ジンジパインという毒素を分泌して歯肉に炎症を起こし
2.歯槽骨という骨を溶かし
3.他の歯周病菌を活発化させる
というメカニズムで歯周病は進行していきます歯周病予防ワクチンはこの歯周病菌のリーダーであるPorphyromonas gingivalis（ポルフィロモナス ジンジバリス）を狙い撃ちするワクチンです。

当院ではチューモスイムノクラブより歯周病菌破砕抗原とリポソーム（後述参照）の試薬キットを購入し、歯周病予防ワクチンとして獣医師の裁量権のもとで使用しています。歯周病予防ワクチンはすでに歯石がついている子にも効果は期待できますが、やはり予防ですので歯が健康なうちから始めることをおすすめします。すでに歯石が付着している場合や歯周病が進行している場合はそちらの治療を行いつつワクチンをさせていただきます。歯周病予防ワクチンは混合ワクチンなどと大きな違いがあります。それは注射ではなく目薬で行うワクチンだというところです。注射ではないためわんちゃんねこちゃんに痛みや負担なく実施できます。

ワクチンスケジュールは初回接種から2週間後に2回目の接種を行います。そこからは4～6か月おきに追加接種となります。混合ワクチンのように1年に1回とはいきませんが、定期的に病院にくることで歯の健康チェックや体重の確認も行える点でもおすすめです。

歯周病予防で大切な点は、ワクチンもしつつ歯磨きもしっかり行っていくというところです。ワクチンをしていれば歯周病菌の繁殖は抑えられますが、歯垢・歯石の付着を完全に抑えることはできないのです。そのため歯垢をとる歯磨きもとても大切です。

歯周病予防ワクチンと併用することをおすすめしているのが、ペロワンというサプリメントです。これはハチミツのような形状で薄く甘味がついているシロップです。歯周病菌が分泌する毒素（ジンジパイン）を狙い撃ちする抗体（グロビゲンPG）が配合されているため歯周病菌をワクチンが、毒素はペロワンが抑えることで相乗効果が期待できます。効果的な使用法などお伝えしますのでぜひご来院の上、お問い合わせください。

歯周病予防ワクチンの目的である歯周病菌への免疫を誘導するために歯周病菌を破砕したもの（＝破砕抗原）を利用しているのですが、これをそのまま使用しても免疫細胞への送達効率が良くありません。そのため十分な免疫が得られません。そこで出てくるのがリポソームという人工脂質二重膜です。リポソームは脂質の膜でできたナノカプセルなのですが、これに歯周病菌を破砕したものを封入すると、免疫細胞への送達効率が飛躍的にあがります。そうすることで十分な免疫誘導が行えます。
リポソームというものは以前から医薬品やワクチン、化粧品などにもすでに利用されているDrag Delivery System（DDS）（ドラッグデリバリーシステム）の一つです。要は、効率よく目的地に成分を届ける技術のことです。効率よく送られた破砕抗原は免疫細胞により、“破砕抗原＝歯周病菌の特徴“をもつ敵に対する抗体の産生を促します。この結果唾液中と血中に抗体が分泌され歯周病菌をやっつけてくれるようになります。