ゆうり動物病院

FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?症状・診断・治療法を徹底解説【飼い主向けガイド】

お問い合わせはこちら

FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?症状・診断・治療法を徹底解説【飼い主向けガイド】

FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?症状・診断・治療法を徹底解説【飼い主向けガイド】

2024/09/12

1. FIP(猫伝染性腹膜炎)とは?

FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫コロナウイルス(FCoV)の変異によって発症する猫の致命的な感染症です。この病気は非常に致死率が高く、特に若い猫多頭飼いの環境にいる猫で発症リスクが高いとされています。FIPは発症すると急速に進行することが多く、早期の診断と治療が猫の生存にとって重要です。

2. FIPの原因

FIPの原因は、猫が猫コロナウイルスに感染し、その一部のウイルスが体内で突然変異を起こすことにあります。このウイルスは通常、軽い消化器症状を引き起こす程度もしくは無症状ですが、突然変異により致命的なFIPウイルスとなり、猫の免疫システムに過剰な反応を引き起こします。この変異ウイルスがFIPを発症させる主な原因です。

3. FIPの症状

FIPには2つのタイプがあり、それぞれ症状が異なります。

ウェットタイプFIPの症状

ウェットタイプは、体内に液体が蓄積することで症状が進行します。主な症状は次の通りです:

  • 腹水や胸水の貯留による腹部膨満や呼吸困難
  • 体重減少と食欲不振
  • 持続的な高熱(抗生物質が効かない)

このタイプは急速に進行し、未治療の場合、数週間以内に命に関わる可能性が高いです。

ドライタイプFIPの症状

ドライタイプは、内臓や神経に硬い結節や炎症を引き起こします。以下のような症状が現れます:

  • 神経症状(麻痺、けいれん、歩行困難など)
  • 目の異常(虹彩炎や視力低下)
  • 持続的な発熱や元気消失

ドライタイプは、症状が多岐にわたるため診断が難しいことがあります。

4. FIPの診断方法

FIPの診断は難しく、確定診断には通常、複数の検査が必要です。主な診断方法を以下に示します。

血液検査

血液検査では、白血球数の増減高蛋白血症炎症反応が確認されることがありますが、これだけではFIPを確定することはできません。

超音波検査

超音波検査は、腹水や胸水の存在を確認するために行われ、ウェットタイプFIPの診断に有効です。また、ドライタイプの場合でも、内臓の異常が見つかることがあります。

PCR検査

PCR検査では、猫コロナウイルスの遺伝子を検出しますが、ウイルスの存在自体がFIPの発症を示すものではないため、他の検査結果と総合的に判断します。

5. FIPの治療方法

FIPは長年治療困難とされてきましたが、最近では有効な治療法が開発されつつあります。(実際にはFIPのために開発されたわけではありませんが割愛します)

GS-441524治療

GS-441524という抗ウイルス薬が、FIP治療において画期的な効果を示しています。この薬は、ウイルスの増殖を抑制することで、ウェットタイプ・ドライタイプの両方で治療効果が確認されています。治療は通常84日間行われ、多くの猫が回復することが報告されています。

当院ではこのGS-441524製剤をイギリスのBOVA社から正式な手続きを経て輸入しており、中国のコピー品のような薬剤量の不安定性の心配がありません。

また、入院症例に対しては注射薬であるレムデシビル(体内で代謝されてGS-441524に変換される)を使用します。

 

モルヌピラビル治療

国内での入手ができるようになったためにモルヌピラビルによる治療が増えてきましたが、治療成功率がGS-441524と比べると若干悪いため当院では基本的には使用しません。GS-441524製剤に耐性があるFIPのような症例に限り使用を検討します。

 

対症療法

FIPの症状を軽減するために、以下の対症療法も併用されます:

  • 腹水や胸水の抜去
  • ステロイド剤による炎症の抑制
  • 栄養補給や点滴による体力の維持

これらの治療は、猫の快適さを保ち、症状を緩和するために重要です。

6. FIPの予防策

FIPそのものを完全に予防する方法はありませんが、リスクを減らすための対策はいくつかあります。

清潔な環境維持

猫コロナウイルスは主に糞便を介して伝染するため、トイレの清掃や衛生管理を徹底することが大切です。特に多頭飼いの場合、感染リスクが高まるため、感染予防策を講じることが重要です。

ストレス軽減

猫がストレスを感じると免疫力が低下し、FIPの発症リスクが高まるとされています。猫が快適に過ごせる環境を整え、適切な栄養管理と定期的な健康チェックを行うことが予防に役立ちます。多頭飼育はFIPの発症のリスクになるためできる限りは多頭飼育を避けましょう。

7. FIP治療の費用と飼い主ができること

FIPの治療には高額な費用がかかることが多く、GS-441524治療の場合は、猫の体重や治療期間によって費用が大きく変わることがあります。数十万円以上かかることも珍しくありません。飼い主としては、猫の異常に気づいたらすぐに動物病院に相談し、適切な治療を選択することが重要です。

まとめ

FIPは非常に致命的な病気ですが、早期発見と治療により、回復が見込まれるケースも増えています。飼い主としては、猫の健康状態に日頃から注意を払い、異常を感じた際にはすぐに専門家に相談することが大切です。また、猫のストレスを軽減し、免疫力を高めるようなケアを行うことで、FIPのリスクを軽減することができます。


よくある質問(FAQ)

Q: FIPは他の猫に伝染しますか?
A: FIP自体は伝染しないとされていますが、原因となる猫コロナウイルスは他の猫に伝染する可能性があります。特に多頭飼いの環境では注意が必要です。

Q: FIPは人に感染しますか?
A: 猫のFIPは人に感染することはありません。猫コロナウイルスは猫にのみ影響を与えます。

----------------------------------------------------------------------
ゆうり動物病院

院長 樋口裕梨
567-0806
大阪府茨木市庄2-26-14-102
電話番号 : 072-648-7823


----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。